選挙手続きの書類作成は誰がやってもいいの? ~知られざる「選挙コンサルタント」の問題点~

違法選挙コンサルタントにご注意ください

2024年から2025年にかけて、兵庫県知事選挙や長崎県知事選挙において、選挙プランナーや選挙コンサルタントによる運動員買収疑惑が相次いで報道されました。また、2025年4月には行政書士法が改正され、無資格者による選挙関連業務の取り締まりが強化されています。

これらの事件の背景には、「選挙のプロ」を名乗る業者が、実は法律を守らずに業務を行っていたという実態があります。今回は、選挙に関わる書類作成について、一般の方にもわかりやすく解説します。

選挙の書類作成は「誰でもできる仕事」ではありません

選挙管理委員会への届出書類作成は「行政書士の独占業務」です

選挙に立候補するとき、次のような書類を選挙管理委員会に提出する必要があります:

  • 立候補届出書(「私は選挙に出ます」という届出)
  • 選挙公営費用請求書(選挙ポスターや選挙カーの費用を公費で負担してもらう手続き)
  • 選挙運動費用収支報告書(選挙にいくら使ったかの報告)

選挙管理委員会は「官公署」です。つまり、これらの書類作成は法律上、行政書士しか行ってはいけない業務(独占業務)なのです(行政書士法19条1項)。

実際にはどうなっているのか?

ところが現実には、「選挙コンサルタント」「選挙プランナー」「選挙参謀」などの肩書を持つ無資格の業者が、これらの書類作成を日常的に行っています。
具体例でいうと:

  • 立候補の手続き書類を候補者の代わりに作成
  • 選挙公費(ポスター代など)の請求書類を作成
  • 選挙事務所の設置届や運動員の届出書類を作成

これらはすべて本来、行政書士の資格がなければできない仕事です。しかし、「選挙のことなら何でもお任せください」というコンサルタント業者が、書類作成も含めて一括で引き受けているのが実態です。

なぜこれが問題なのか?

1. 法律違反である

行政書士法19条に違反する行為で、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。

2. 選挙の公正さが損なわれる

無資格者が書類を作成すると、以下のような問題が起こります:

  • 法律知識が不十分で、違法な記載をしてしまう
  • チェック体制がないため、間違いや不正が見過ごされる
  • 責任の所在が不明確になる

例えば、兵庫県知事選挙では、選挙コンサルタントが運動員への報酬支払いに関わり、買収罪の疑いが持たれました。適切な法的チェックがあれば防げた可能性があります。

3. 候補者自身が罰せられるリスク

選挙に関する書類に虚偽記載があったり、違法な支出があったりすると、候補者本人が公職選挙法違反で罰せられます。「コンサルタントに任せていたから知らなかった」では済まされません。

2025年の行政書士法改正で何が変わったのか

「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」が明文化されました

2025年4月の法改正で最も重要なポイントは、「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が明示されたことです。

従来の問題点:
  • 無資格者が「無料でやっています」「ボランティアです」と主張すれば、違法性の立証が難しい面がありました
  • 「コンサルティング料金の中に書類作成は含まれていない」と言い逃れするケースもありました
  • 実際には選挙コンサルティング全体の料金の中で書類作成も行っているのに、形式的に「書類作成は無償」としていることがありました
改正後:
  • 報酬の受け取り方(会費、手数料、コンサルタント料など)に関わらず、業として(反復継続して)行えば違法であることが明確になりました
  • 「書類作成はタダでやっているから問題ない」という言い訳は通用しません
  • たとえコンサルティング契約全体の中に含まれていても、書類作成行為自体が違法となることが明示されました
具体例でいうと:
  • 選挙コンサルタントが「書類作成はサービスで無料です」として立候補届を作成 → 違法
  • 「選挙全体のコンサルティング料100万円」の中に書類作成が含まれている → 違法
  • 選挙ポスターなどのデザイン業者が選挙公営の書類作成している → 違法
  • 行政書士資格を持つ者が適切な報酬を受けて書類作成 → 適法

その他の改正ポイン

  • 違反行為への罰則が強化
  • 無資格者への取り締まりが明確化
  • 行政書士会による監督機能の強化

これらの改正により、選挙コンサルタントによる違法な書類作成業務への規制が、より実効性を持つようになりました。

適切な選挙手続きとは

公職選挙法第1条は、選挙が「選挙人の自由に表明せる意思によって公明かつ適正に行われること」を目的としています。

そのためには:

  1. 法的資格を持った専門家(行政書士)が書類を作成する
  2. 適切な法的チェックを受ける
  3. 透明性のある手続きを行う

これらが不可欠です。

民主政治の健全な発達のために

選挙は民主主義の根幹です。その手続きが、無資格者による違法な業務によって歪められてはなりません。

候補者の皆様へ: 選挙コンサルタントに依頼する際は、「書類作成は誰が行うのか」「その人は行政書士資格を持っているか」を必ず確認してください。「無料だから」「コンサルティング料に含まれているから」といった説明があっても、行政書士資格のない者が書類作成を行っている場合、それは違法行為です。

有権者の皆様へ: 選挙の公正さは、適切な法的手続きによって守られています。候補者が法律を守っているか、という視点も大切です。

当事務所では、選挙法務専門の行政書士が、立候補手続きから選挙公費請求、収支報告まで、適法かつ適切に代理人として手続きを行います。法令を遵守した選挙運営をサポートし、公正な選挙の実現に貢献いたします。

担当行政書士:戸川大冊

特定行政書士 戸川大冊

出身

東京都

略歴

  • 私立 芝高校
  • 早稲田大学政治経済学部
  • 立教大学大学院法務研究科修了 法務博士(専門職)取得
  • 行政書士(東京行政書士会所属 登録番号10081794)
    早稲田では、東国原元宮崎県知事の先輩で、同じ講義を履修。
  • 大学在学中より、衆議院議員原口一博事務所で政策立案に従事。
  • EVE法務行政書士事務所 設立
  • 2010年インターネット選挙戦略研究所(合同会社IT政策調査研究所)を共同設立
  • 前 東京行政書士政治連盟豊島支部長
  • 前 東京都行政書士会豊島支部副支部長

専門分野

  • 政治資金コンサルティング
  • 政務調査費コンサルティング
  • 政策立案
  • 選挙戦略コンサルティング
  • 政治団体設立

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